大家から立ち退きを求められたら?立退料の相場と絶対にやってはいけない初期対応

長年営業してきた店舗やオフィスに対して、ある日突然、大家(貸主)や管理会社から「建物を建て替えるので、半年後に立ち退いてほしい」と通知が来たら、多くの経営者様は戸惑うはずです。

「すぐに出ていかなければならないのか?」 「移転費用や休業中の損失は誰が払ってくれるのか?」

結論から申し上げますと、大家からの立ち退き要求にすぐ応じる必要はありません。また、店舗の立ち退きには、事業を継続するための正当な「立退料(営業補償)」が支払われるべきです。

この記事では、店舗テナントが立ち退きを求められた際に知っておくべき法的な権利と、立退料の相場、そして絶対にやってはいけない初期対応について詳しく解説します。

そもそも、大家からの立ち退き要求には応じるべき?

大家からの立ち退き要求(賃貸借契約の更新拒絶や解約申し入れ)が法的に認められるためには、借地借家法第28条により「正当事由」が必要です。

建物の「老朽化」だけでは正当事由にならない

大家側が立ち退きの理由として最も多く挙げるのが「建物の老朽化」や「再開発」です。しかし、少し古くなった程度の老朽化だけで、ただちに正当事由が認められるわけではありません。今にも倒壊しそうな危険な状態でもない限り、大家側の都合だけでテナントを一方的に追い出すことは法律上できないのです。

「立退料」は正当事由を補完するもの

大家側の立ち退き理由(正当事由)が弱い場合、それを補うために支払われるのが「立退料」です。つまり、テナント側が納得する十分な立退料が支払われて初めて、大家は立ち退きを進めることができるのが一般的な実務の考え方です。

店舗の立ち退き料(営業補償)の相場と内訳

「店舗の立退料の相場はいくらですか?」というご相談をよくいただきますが、居住用アパートと異なり、店舗の立退料に明確な相場(決まった数式)はありません。 なぜなら、業種、立地、売上規模、内装の投資額などによって、移転に伴う損害額が全く異なるからです。

店舗の立ち退き交渉では、単なる「引っ越し代」ではなく、以下のような「事業を継続・再建するための実損額」を積み上げて算定します。

  • 移転費用(物件取得費・引越代): 新店舗の保証金、仲介手数料、礼金、引越業者の費用など。
  • 造作・内装設備の補償: 現在の店舗に投資した内装、空調、厨房設備などの残存価値。
  • 休業損害(営業補償): 移転に伴う休業期間中に失われる利益や、休業中も発生する固定費(従業員給与など)。
  • 営業権(のれん)の喪失補償: 現在の場所で定着していた常連客が離れることによる将来的な利益の損失。
  • 移転雑費・告知費用: 顧客への移転案内のDM費用、看板の掛け替え、WEBサイトの修正費用など。

大家側から最初に提示される金額は、単なる「引っ越し代と保証金の返還」程度であるケースがほとんどです。これらを専門的な視点で算定し直すことで、立退料が数倍に跳ね上がることも珍しくありません。

立ち退きを求められたテナントがやってはいけない「3つのNG行動」

突然の立ち退き要求に対し、焦って間違った対応をしてしまうと、後々不利な状況に追い込まれます。以下の3つの行動は絶対に避けてください。

その場で合意書にサインする(口頭了承もNG)

「立ち退きは決定事項です」と強く迫られ、提示されたわずかな立退料の合意書にその場でサインしてしまうのは最も危険です。「わかりました、検討します」とだけ伝え、書類には絶対にハンコを押さないでください。

感情的に反発し、大家と喧嘩状態になる

不当な要求に対して怒りを感じるのは当然ですが、大家や管理会社に対して感情的に怒鳴り散らしたり、着信拒否をしたりするのは得策ではありません。その後の交渉が難航し、最悪の場合は調停や裁判へと発展し、解決までの時間と労力が無駄にかかってしまいます。

自己判断で法外な金額をふっかける

「立ち退いてほしければ1億円払え」など、相場や実損額から大きくかけ離れた金額を根拠なく要求することもNGです。交渉が決裂し、大家側から「法的措置(明け渡し訴訟)」を起こされるリスクが高まります。適正な金額は、論理的な根拠に基づいて主張する必要があります。

店舗の立ち退き交渉は、弁護士への早期相談が鍵

店舗テナントの賃貸借契約は「ビジネス間(BtoB)」の契約です。居住用物件と比べてシビアな交渉になるため、大家側も弁護士を立ててくることが少なくありません。

弁護士に交渉を依頼することで、以下のようなメリットがあります。

  1. 適正な立退料の算定と獲得: 裁判例や法律に基づき、内装代や休業損害をしっかりと計算し、貸主へ請求します。
  2. 直接交渉のストレスから解放: 弁護士が窓口となるため、大家や管理会社からの直接の連絡が止まります。
  3. 本業(店舗経営)に専念できる: 煩わしい交渉をプロに任せることで、新店舗の準備や日々の営業に集中できます。

泣き寝入りせず、まずはご相談を

大家から立ち退きを求められたからといって、すぐにお店を閉めたり、不利な条件で立ち退いたりする必要はありません。お店の移転という大きな転機を、適正な補償による「ポジティブな再出発」に変えるためには、初期段階での正しい対応が不可欠です。

提示された条件に少しでも疑問を感じたら、サインをする前に、まずは弁護士にご相談ください。あなたの事業を守るための最適な解決策をご提案いたします。

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