【飲食店向け】店舗立ち退き交渉の4つのポイント。厨房設備や休業補償はどうなる?

カフェ、居酒屋、レストランなどの飲食店を経営されている方にとって、大家(貸主)からの突然の「立ち退き要求」は、まさに死活問題です。

飲食店は一般的なオフィスや小売店と比べて、「初期投資(内装・厨房設備)が非常に大きい」「立地が売上に直結する」という独自の特徴があります。そのため、立ち退きに伴うダメージが極めて大きく、単なる「お引っ越し代」程度の立退料では到底事業を再建できません。

この記事では、飲食店が立ち退きを求められた際に絶対に押さえておくべき、特有の交渉ポイントを4つに絞って解説します。

高額な「厨房設備・内装」の残存価値をどう評価するか

飲食店を開業する際、ダクト(排気設備)、グリストラップ(油脂阻集器)、大型冷蔵庫、防水工事など、目に見えない部分を含めて数百万〜数千万円規模の投資を行っているはずです。

立ち退き交渉において最も争点になるのが、この「造作(内装や設備)」の価値です。 多くの賃貸借契約書には「退去時はスケルトン(原状回復)にして明け渡すこと」「造作買取請求権は放棄する」という特約が入っています。大家側はこれを盾に「内装代は一切払わないし、自費で壊して出ていけ」と主張してきます。

しかし、大家都合の立ち退きにおいて、この主張をそのまま呑む必要はありません。 法的な造作買取請求権としては難しくても、「本来ならあと〇年使って減価償却できたはずの設備を、大家の都合で無駄にさせられる損害」として、内装設備の残存価値を立退料(営業補償)にしっかりと上乗せして請求することが交渉の基本となります。

長引く移転期間中の「休業損害」と「スタッフの給与」

飲食店の移転は、物件を見つけてすぐに再開できるものではありません。 保健所への営業許可申請や、消防署への届出、新店舗の図面作成から内装工事まで、数ヶ月の期間を要します。

この「営業できない期間(休業期間)」に対する補償も、立退料の重要な構成要素です。具体的には以下の項目を精査し、大家側に請求します。

  • 逸失利益: 過去の売上実績(確定申告書や帳簿)に基づき、休業期間中に本来得られたはずの営業利益。
  • 固定費の補償: 休業中も支払い続けなければならない正社員・アルバイトの人件費(休業手当)、リース代などの固定費。
  • 食材の廃棄ロス: 移転に伴い、使い切れずに廃棄せざるを得ない生鮮食品や酒類などの損失。

特に、優秀なスタッフを移転先でも継続雇用するためには、休業中の給与補償が絶対に欠かせません。

地域密着店ならではの「のれん代(営業権)」の喪失

飲食店、特に地域住民に愛されている個人店にとって、「今の場所にあること」自体が最大の価値です。 移転すれば、これまで何年もかけて培ってきた「常連客」の多くを失うリスクがあります。これを法律用語で「営業権(のれん)の喪失」と呼びます。

新店舗で再び同じだけの顧客を獲得し、売上を元の水準に戻すまでには多大な時間と広告費がかかります。そのため、常連客が離れることによる将来的な利益の減少分や、新店舗でのチラシ配布・グルメサイトへの再掲載費用などの「告知費用」も、立退料として評価されるべき正当な項目です。

新たな「飲食可物件」を見つけるハードルの高さ

物件探しの観点からも、飲食店は特殊です。 「重飲食(焼肉やラーメンなど匂い・煙が出る業態)は不可」「軽飲食(カフェなど)のみ可」といった制限を設けているテナントが多く、希望するエリアで条件に合う移転先を見つけるのは至難の業です。

さらに、昨今の建築資材の高騰により、ゼロから内装を作るスケルトン物件では移転費用が膨大になります。居抜き物件を探すにしても、理想のレイアウトに出会える保証はありません。

だからこそ、「移転先の物件取得費(保証金・礼金・仲介手数料など)や内装工事費の差額」を、実損額としてどれだけ精緻に算定し、立退料に反映させられるかが事業継続の鍵を握ります。

飲食店の立ち退きは「廃業リスク」との戦い

大家側から提示される「引越代と保証金の返還で〇〇万円」といった初期提示額は、飲食店の移転にかかる莫大なコスト(実損額)を全く反映していないケースがほとんどです。

「立ち退きは決定事項だから仕方ない」と、その場で安易に合意書にサインをしてしまうと、移転資金がショートしてしまい、最悪の場合は「廃業」を余儀なくされてしまいます。

飲食店の立ち退き交渉は、多額の金銭と従業員の生活がかかったシビアな問題です。大家側から立ち退きの通知を受け取ったら、自己判断で交渉を進める前に、まずは店舗テナントの立ち退き問題に強い当事務所の弁護士へご相談ください。 お店の存続を第一に考え、適正な補償を獲得するための戦略を共に立てていきましょう。

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